2022年3月2日 会場レポート(後半)

目まぐるしく変わる時流のなかで、確実に人の目を惹きつけ、心地良い時間を過ごしてもらうには、どのような工夫をするべきだろうか。今年のJAPAN SHOPの会場を巡りながら、最新の動向をチェック。これまでにない新たな素材や技術開発、そしてチャレンジングな取り組みを積極的に行っている参加企業をピックアップする。

●緑化計画に求められるのは、メンテナンスの軽減。

心を癒す、鮮やかな木々の緑。安らぎの空間を作りたくても、十分な外光が得られなかったり、手入れや害虫駆除の手間が面倒という声も多い。こうしたなかで注目されているのが、造花や人工樹木の存在だ。横浜に拠点を構えるポピーが運営する〈YOKOHAMA Display Museum〉は、B to B事業を基本として国内最大級のプロショップ。造花メーカーの専門知識を活かし、大型プランター、贈答用の造花ブーケなどをオーダーメイドで製作してくれる。〈グリーンフィールド〉は、英国生まれの人工壁面緑化パネル「ビスタフォリア」を紹介。UV耐久性が強く、簡単に施工できるパネルは3種。さらにオプションで彩りを加える「カラーボックス」も揃う。〈岩や〉は、盆栽をはじめ、和テイストの人工樹木を得意とするメーカー。造形力の高さには定評があり、近年は竹林や池などの設計も行う。そして、ガーデニング関連用品を取り扱う〈タカショー〉は、庭や自然の風景と建物をシームレスに繋ぐための多様な建材を開発。天然木の風合いをリアルに再現したデッキ材「エバーエコ®ウッド リアル」ほか、豊富な施工事例とともに多様な提案を行っていた。

YOKOHAMA Display Museumの製品

贈答用の造花ブーケもオーダーメードで〈ポピー〉

グリーンフィールドの製品

UV耐久性が強く、簡単に施工できる人工壁面緑化パネル「ビスタフォリア」〈グリーンフィールド〉

岩やの製品

自社で設計の和テイストの人工池や盆栽が人気〈岩や〉

タカショーの製品

天然木の風合いをリアルに再現したデッキ材「エバーエコ®ウッド リアル」〈タカショー〉

●デザインの可能性を広げる、多様な新素材。

空間構成の基本となる床材、壁材。目的に応じて適切な機能性を保持しながらも、選択肢が多いほどにインテリアデザインの可能性は広がる。
〈アイカ工業〉は、素材に応じて使用場所が限られていた「セラール」「フィオーレストーン」「ラミナム」「クライマテリア」を、床、壁、什器すべてに採用できるように開発。「セラールウイルテクトPlus」は、高ウイルス・抗菌性能に加え、消臭性能が追加された高機能建材。フランスの総合建材メーカーTarkett社の輸入代理を務める〈CIPSアドバンス〉は、世界初となるバイオマス塩化ビニル床材を発表。リサイクル可能で環境負荷を軽減する地球にやさしい素材を紹介している。そして〈DDG JAPAN〉はシンガポールのDDG GLASSと日本のアサダメッシュなどと協業し、開発した、極薄のメタルメッシュをガラスに挟み込んだデザイン性の高い製品や、合わせ曲げガラスを紹介した。。

アイカ工業の製品

抗ウイルス・抗菌性能に、 消臭性能が追加した「セラールウイルテクトPlus」を初出展〈アイカ工業〉

CIPSアドバンスの製品

世界初となるバイオマス塩化ビニル床材を紹介〈CIPSアドバンス〉

DDG JAPANの製品

極薄のメタルメッシュを挟み込んだデザインガラス、合わせ曲げガラスなどを紹介〈DDG JAPAN〉

●高精細&高画質に加え、作業効率もさらに向上。

大型商業施設やイベント会場など、さまざまな催し物が行われる空間において、必要不可欠なのが大判出力の技術だ。より美しく、リアルな表現を求めるために、印刷機器メーカーはこぞって高精細&高画質の出力機を販売しているが、今年のJAPAN SHOPでは、生産性の高い機種が紹介された。〈ミマキエンジニアリング〉は、最上位機種である「330シリーズ」は、通常別加工となるカット作業を一台で行う複合機。また、3種の印刷メディアを簡単に切り替えることができるメディアチェンジャーも搭載し、高い作業性を付加した。〈ローランド ディー.ジー.〉は、世界同時発売となる最新機種「TrueVIS VG3」シリーズをJAPAN SHOPで初披露。柔らかさと色幅を表現する8種のインクをセットできるこの機種は、操作を液晶タッチパネルで簡易化。さらに自動巻き取り機能を標準装備し、大判&長尺の印刷物のしわや汚れを心配することなく、ラミネートなどの二次加工もしやすくなったという。

ミマキエンジニアリングの製品

省作業のアシストなど新機能を備えた「330 Series」〈ミマキエンジニアリング〉

ローランド ディー.ジー.の製品

世界同時発売となる最新機種「TrueVIS VG3」シリーズは操作を液晶タッチパネルで簡易化。ラミネートなどの二次加工も簡易に〈ローランド ディー.ジー.〉

●照明の世界を拡張する「色」と「細さ」。

LED普及で、照明のあり方は大きく進化した。同時に、それを取り巻く周辺機器や制御装置にも新しい波が押し寄せている。クラシックなフラットスイッチ「LS990」を1968年から発売しているドイツのスイッチメーカー、JUNG(ヨン)の輸入を行う〈プライム・スター〉は、モダニズムの巨匠、ル・コルビュジエが構築した色彩システムを採用した「Les Couleurs® Le Corbusier」を発表。独特の色表現が空間を印象づける。〈DNライティング〉は、今年6月から販売開始する、厚さわずか5mmの極細LEDモジュール「MU-LED」をいち早く紹介。長さ42〜1494mmまで、全45種を用意し、手すりの裏などのちょっとした隙間にも組み入れられるフレキシビリティが特徴だ。

プライム・スターの製品

独・JUNG社のル・コルビュジェの色見本63色による照明スイッチを日本初出展〈プライム・スター〉

DNライティングの製品

意匠性の高い幅5㎜の業界最小クラスのLEDモジュール「MU-LED」を初展示〈DNライティング〉

●防災時も赤ちゃんに安全なスペースを

〈コンビウィズ〉は屋内の避難場所や避難所で使用できる「段ボール製乳幼児用コット(仮称)」を参考出品した。組み立て式でコンパクトに保管が可能。避難所など非日常な環境下でも赤ちゃんと保護者が安心に健やかに過ごせるよう様々な工夫がされている。

コンビウィズの製品

災害時の避難所で赤ちゃんを守る「段ボール製乳幼児用コット(仮称)」を参考出品〈コンビウィズ〉

●専門メーカー、地域産業、デザイナー、それぞれの挑戦。

JAPAN SHOPの会場内では、日本が誇る伝統的なものづくりの技とデザインの次世代をつなぐ企画展「NIPPONプレミアムデザイン」も開催。日本各地からチャレンジングなプロジェクトが大集結している。東大阪でひし形金網を製造する〈共和鉱業〉は、従来の工業用フェンスにグラフィックを加えたり、立体仕上げといった二次加工を追加。工業用部材のまだ見ぬ可能性を追求している。各種ワイヤーシステムの製造・販売を行う〈荒川技研工業〉ワンタッチで上下できるワイヤー固定金具「ARAKAWA GRIP」とピクチャーレールを組み合わせたインスターレションを展開。粉体塗装を得意とする〈シリウス〉は、世界の美しい景色を映し取った「スケープカラー」で、色鮮やかなゲートを再現していた。徳島に伝わる伝統文化、藍染の新たな取り組みを紹介する徳島県ブースでは、突板で木象嵌を手がける〈森工芸〉が、藍染のトレーを発表。木目に染み込んだ藍が魅力的な光を放っていた。また、デザイナーによる新プロジェクトの一つとして、倉本仁が淡路島に伝わるいぶし瓦を再生する〈oiya〉を紹介。見慣れた日本瓦に未来のかたちと可能性を与えている。そして、〈JCD/日本商環境デザイン協会〉のブースでは、「JCD TALK LOUGE」と題し、参加デザイナーが登壇。アイデアの組み立て方やプロジェクトの詳細、インテリアを取り巻く環境など、さまざまなテーマを4日間にわたり発表がされた。

共和鉱業の製品

従来の工業用フェンスにグラフィックを加えるなど、業用部材可能性を追求するを展示〈共和鉱業〉

荒川技研工業の製品

ワンタッチで上下できるワイヤー固定金具「ARAKAWA GRIP」とピクチャーレールを組み合わせたインスターレションを紹介〈荒川技研工業〉

シリウスの製品

粉体塗装技術を生かした「スケープカラー」で、色鮮やかなゲートを再現〈シリウス〉

森工芸の製品

木目に染み込んだ藍が魅力的な光を放つ藍染トレー〈徳島県〉

oiyaの製品

淡路島に伝わるいぶし瓦を再生する〈oiya〉を紹介〈JIN KURAMOTO STUDIO〉

JCD/日本商環境デザイン協会の製品

「JCD TALK LOUGE」では、4日観にわたり約30名の参加デザイナーが登壇し、アイデアの組み立て方や手がけた作品を発表。〈JCD〉

テキスト:猪飼尚司