建築・建材展 2007 会場レポート1(3月6日)~安心建材のニーズがさらに高まる~
7つの展示会で構成される「街づくり・流通ルネサンス」のひとつである、第13回「建築・建材展2007」(東京ビッグサイト・東5~6ホール)が、3月 6日(火)に開幕した。出展社数272社、出展小間数610小間と、過去最大の規模となり、昨夜の嵐のような天候が回復したこともあり、来場者の出足は朝から好調だった。初日は、来場者への取材でもニーズの多かった「安心建材」を中心にレポート。また、細かい配慮の行き届いた製品・技術にもスポットを当ててみた。

■防犯抑止効果のある「人工芝」
石油化学、石炭化学、有機・無機化学、生命科学など幅広い分野における製品・技術を開発している三菱化学グループ。今回は、その中でも一般のエンドユーザーにとって身近なものが出展されている。それは、同グループの『アストロ』が開発した人工芝。スポーツ施設用として開発した際のノウハウを活かしたものだ。景観に優れた「Astro Garden LSL」、クッション性を確保し子供が走り回っても安全な「AstroGarden JOY」、そして防犯用の「Astro Garden SEC」の3点がある。なかでも、興味深いのが防犯用の人工芝。防犯用の砂利と人工芝を組み合わせ、足で踏むと「ジャリジャリ」大きな音がするので、侵入抑止効果がある。住居の勝手口や、人目につきにくい個所での需要が期待できそうだ。

三菱化学グループ・アストロのブース。

アストロが提案している家庭の庭で使える人工芝。

侵入者の抑止効果がある「防犯用人工芝」。
■安全・安心、しかもトータルコストが売りの耐火被覆材
耐火被覆の技術では定評のある『ニチアス』。近年、取りざたされているアスベスト問題や環境問題に対して、同社がいち早く対応して開発したのが巻き付けタイプの耐火被覆材「マキベエ」。2000年の発売後、法改正などを経て、2003年にはプロジェクトチームを結成してリニューアルを図り、「脱・吹きつけ」をスローガンとして現在に至っているという。従来の耐火被覆材では、イニシャルコストの削減に重きを置いていたが、「マキベエ」では施工までのトータルコストを考慮。工場生産された高耐熱ロックウールをプレカットし、施工現場では専用の固定ピンを使ってスタッド溶接して固定するため、安定した品質を確保するとともに、安全性と施工性にも優れている。

「脱・吹きつけ」をアピールしているニチアスのブース。

耐火被覆材「マキベエ」を梁に施工したサンプル。
■プラスチックと、金属やLEDとのコラボレーション
プラスチックと金属・繊維などの物質とを結合し、新しい商品を開発している『積水樹脂』では、ステンレス複合材「メタカラー リアル」とLED+導光板による「光る面材シリーズ」などを出展。
前者は、近頃人気のステンレスを使ったディスプレイに際して、単板ではなく<ステンレス+プラスチック+ステンレス>という3層構造の複合板にすることで、加工性はもちろんのこと、軽量化による施工性の向上を実現。表面に化学発色を施した高級感のあるステンレス複合板による、美しい外観仕上げが可能になった。
一方、後者の「光る面材」は、これまで均一な発光が難しかったLEDに改良を加えるとともに、光をきれいに拡散する特殊印刷方式の導光板を採用。省エネはもちろんのこと、ランプ交換の手間を軽減し、しかも薄型スリムな構造を実現している。さらに、LED光源部材をユニット化した製品も近日発売予定で、新設だけでなく既設のサインにも置き換えられるようになる。

ステンレス複合材「メタカラー リアル」を使った
美しい曲線を描くディスプレイ。

LED+導光板による「光る面材シリーズ」の明るく見やすいサイン。
■プレゼンテーションのカギとなる豊富なバリエーション
店舗などの商業施設や公共施設におけるフローリング材を中心に出展している『ボード』では、樹種、表面仕上げ、カラーリングの違いによるプレゼンテーションが興味深い。差別化が求められる昨今の商空間デザインにおいては、豊富なバリエーションが決め手となることが多い。こうしたニーズに応えて、同社では樹種はもちろんのこと、表面仕上げやカラーリングに関するオーダーメイドにも対応しているという。また、店舗など土足で歩くことを前提としているため、材質を選ぶとともに特殊加工を施し、耐久性、耐摩耗性、耐衝撃性などの向上にも努めている。なお、今回出展している商品は店舗などを想定したものだが、一般住宅で使用することも可能だ。

バルーンのような形状で人目をひくボードのブース。

バリエーション豊富なボードの商品。
写真は新製品「ワンハーフクロス」と「ワンハーフクロスα」。
■今後活用される建材や住宅設備、景観材料とは
特別企画「安全・安心、快適な住環境を考える」では、共催者の『(社)日本建材・住宅設備産業協会/景観材料推進協議会』と『旭化成建材(株)』『経済産業省オゾン層保護等推進室』『樹脂サッシ普及促進委員会』の展示のほか、ブース前に設置のステージで各社・団体によるプレゼンテーションが行われている。内容は、省エネ住宅を支える技術面や省エネ住宅の市場確立に向けた動向などの最新情報に関するもので、連日開催されている。

特別企画「安全・安心、快適な住環境を考える」の
関連セミナーの様子。
□地球環境にやさしく壁面緑化も可能な外壁材
地球温暖化やサスティナブルなどをテーマに、「溶岩サイディング」を出展しているのが『日本ナチュロック』。同社は、約30年前から溶岩パネルを河川の護岸工事などの土木工事で採用し、数々の実績を残している企業だが、このノウハウを活かして開発したのが「溶岩サイディング」。通常のサイディング同様、建物の外壁に用いることができるこの製品は、溶岩を加工して金属サイディングに接着するため、多孔質で保水性に優れ、夏は涼しく冬は暖かい快適な室内環境を実現。また、壁面に設けた小さなボックスではツタやコケなどの植物が成育しやすく、壁面緑化が容易にできる。メンテナンスフリーなどを売りにしている最近の外壁材とは、全く異なる発想から生まれた製品といえるだろう。

環境問題に関心の高い来場者に
インパクトの強かったナチュロックのブース。

植物を植えるための専用ボックスを備えた「溶岩サイディング」。
□設置しやすく、使いやすい手すりを追求
介護用品メーカーである『アロン化成』が提案する「安寿」介護用品シリーズの「屋外・屋内手すり」。介護用品を得意としているだけあって、安全・安心設計は当たり前だが、施工性や加工性への配慮が行き届いている。なかでも注目は、手すりの出幅や高さを無段階にスライド調節できる機構の採用と、3次元コーナー部材の採用により支柱の設置本数を減らすことができることだ。障害などの程度は、加齢や症状によって変わるもの。これらに細かく対応できるしくみと、バリアになる支柱を減らせるシンプル構造は、介護用だけでなく誰でも使いやすいユニバーサルデザインともいえるのではないだろうか。

高齢化社会には欠かせない介護用品を提案しているアロン化成のブース。

人の動作や個人差に対応できる多彩なブラケットやジョイントなどを展示。
□フェイルセーフの発想で環境保全
先進的な自動車技術を世界に提供している『デンソー』の経験とノウハウを活かして2003年に設立された『デンソーファシリティーズ』(ラース工法研究会との共同出展)。今回出展している中でもおもしろいのは、「PPL油水分離層」と「廃油地下タンク」だ。前者は、地中に埋設したコンクリート水槽が、ヒビや経年劣化などで液漏れするのを防ぐための技術。コンクリート施工時に、高密度ポリウレタンプレートライニング(PPL)をコンクリートの内側に打設することで、クラックが発生しても液漏れしないというもの。後者は、地下タンクから万一、液漏れが起きたり、地下水などがタンク内に侵入した際に検知する装置。タンクを二重構造にすることで、安全性を高めるとともに、その中に検知装置を設置できるというもの。いずれも、フェイルセーフの発想を採り入れた製品・技術である。
ラース工法研究会のブース内にあるデンソーファシリティーズの展示。